21日、22の二日間、栃木県産業振興センター主催のセミナーが開かれました。
企画、講師依頼、進行など、実質はITCとちぎが担い、ITCとちぎ代表幹事として僕が中心となってつくりあげました。
今回の目玉は、バランス・スコアカード(BSC)の第一人者である吉川武男先生(横浜国立大学大学院教授)とIT経営での成功事例として最も有名な東海バネ工業株式会社の渡辺社長の講演でした。
1日目の午前は、吉川先生の講演。「バックミラー経営からナビゲーション経営への転換」と題して、バランス・スコアカードの基礎を語って頂きました。


「2時間もしゃべれないよ。僕は寡黙だから」などといいながら、BSCの話になるとどんどんのって来て、キャプラン研究室にいたころの話、サウスウエスト航空などの有名企業の成功事例、成功した運送会社の社長との付き合いなど縦横無尽に語って頂きました。アメリカでの奥さんとの出会いの話まで飛び出し、会場は笑いにつつまれました。
吉川先生は足利市の出身で、セミナー参加者の中にも足利の企業の社長さんで、足利高校の後輩にあたる方もいらっしゃり、ローカルな話題にも花が咲きました。
午後は、ITCとちぎの阿久津氏が担当し、製造業を事例としてSWOT分析からクロス分析、重要経営課題の抽出のプロセスを4つのグループに分かれて演習しました。

SWOT分析の手法自体はかなり昔からある手法なのですが、企業の現場で取り入れているところは少なく、経験のない方が多かったので、SWOTの判断の仕方や1件のまとめ方など最初はとまどう方もいましたが、だんだん慣れてきて討論が盛り上がっていきました。

二日目は、予定外で僕がBSCの説明をすることになり、前日に急きょ準備したプレゼン資料を使って30分ほど話しました。

BSCについては、4年前から吉川先生のBSC研究会に入会していて、年に数回はBSC関連のセミナーに参加していますし、中小企業を支援する現場でも何回か実践しているので、自分なりの運用に関する考え方は固まってきています。世の中にはいろんな経営手法がありますが、BSCというのはそれらを包含できる手法として、これからますます広まっていくでしょうし、また広めたいと思っています。
2日間のセミナーの最後は、東海バネ工業の渡辺社長、営業マネージャーの渡辺秀治氏のお話でした。
今年の7月に渡辺社長とお会いした時、その時のセミナーでの持ち時間が40分だったこともあって十分話しきれなかったような雰囲気だったので、今回はたっぷり3時間の時間を取って、30年に及ぶ東海バネ工業のIT化の経緯を語って頂きました。

渡辺社長は2代目だそうですが、親からの引継ぎではなく、「遠い親戚」という関係で入社し、大量生産・合理化が世の中の流れだった時代に本当に手作りバネの会社を引き継いでいけるかどうか、かなり悩んだそうです。
その社長を変えたのは、ヨーロッパへの視察でした。
ドイツの手作りバネの社長が「値引きを迫ってくるようなお客には売らない」といったことから衝撃を受け、「適正な価格で(言い値で)売れるバネを作ろう!」と決心したそうです。またフランスの現場で、今で言う3Kの職場に若い女性が働いている理由を尋ねたときに「給料が高いから」と教えられたこともインパクトがあったそうです。現場で汗を流して働く職人にこそ報わなければならない、と考えるようになったとのことでした。
「言い値」で買って頂ける品物を作り、そういうお客様を見付けることが、その後の東海バネのコンセプトとなりました。
早い時期のコンピュータの導入も、顧客の購買行動をすべてデータとして保存し活用する、次に注文に来た顧客に対して1対1で向かいあえるようにする、すべての顧客がお得意様、という対応ができるような仕組みを作りたい、という社長の思いを実現するための道具だったのです。
2003年に国の補助金でITコーディネータが支援に入り、Webで自社の技術を公開したことがその後の急速な売り上げ増、利益増(今年度の営業利益見込み20%)をもたらしたのですが、それまでの技術や顧客満足度向上の仕組みの積み重ねがあったからこそ、爆発的な成長をとげたのでしょう。
今まで何度か渡辺社長の講演を聞いたことはあるのですが、今回は期待通り本当の東海バネの強みを深く実感することができ、とても感動しました。
二日間で26名の参加を得て、セミナーも無事終わりました。参加して頂いたみなさん、講師の方々、準備に協力して頂いたみなさん、ありがとうございました。